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ドキドキ☆ホストクラブの話

 ここ数年で仲良くなった友人(Aちゃん/20)が、シンデレラもびっくりのスピードで、闇深い階段を駆け下りていっています。

 

 出会いはコンセプト喫茶でした。簡単に言えば執事喫茶なのですが、そこはもう、安価なホストみたいな世界な訳です。それぞれに「推し」と呼ばれる執事がいて、彼らに給仕をしてもらう、一緒におしゃべりする、チェキを撮る。高額なプレゼントを渡す女の子たちも当然出てくる。そういったところで空気中に漂う闇を吸いながらご飯を食べるのにハマった時期があったのですが、その時に知り合った女の子です。

 Aちゃん、当時まだ未成年。飲み物はいつも「桃ジュース」のかわいい女の子です。

 

 そういったコンセプト喫茶では、一部芸能活動をしている方々がいることが多いです。女性でいえば、アフィリア・サーガさんみたいに、お店のキャストでアイドルグループを作っていたりだとか。男性ですと、バンドマンや若手俳優、若手モデルさんなどがいたりします。青田買いのチャンスしかありません。

 

 閑話休題

 

 その当時通っていた執事喫茶には、ヴィジュアル系のバンドマンがいました。といっても、セッション麺(バンドマンは麺と称されます)と呼ばれる、「自分のバンドを持っていない」バンドマンなんですけれど。

 そりゃあ、コンセプト喫茶で彼を推している女の子はみんな観に行きますよね。いつもは執事服で給仕してくれる「彼の人」が、ヴィジュアル系の衣装を着て激しい音楽を奏でるというのだから!

 という訳で、わたしは推してはいないものの、ヴィジュアル系バンドを観に行く趣味はあるので行きました。そこにAちゃんがいました。全然ノリが分からないと戸惑うAちゃんは後ろの方でびくびくしながらバンギャル(ゴリラの亜種)の姿を眺めていたのですが、しばらくすると……おや?Aちゃんの様子が?

 

「ねえ!今の人かっこいい!」

 

 彼女がかっこいいと言ったのは、その日の対バンの中では最も動員数の少ない、できたてほやほやの古からやってきた医療系バンドの方でした。正直、演奏もぐだぐだ、煽りもぐだぐだで、こちらは全く興味がなかったのですが、彼女はいたくお気に召したようでした。

 

 それからしばらくすると、コンセプト喫茶への来店率が低下し、そして彼女は立派なバンギャルになっていました。バンドマンにきゃーきゃー言い、ドン・キホーテで売っているパステルカラーの小さなお立ち台に立って、あの時かっこいいと言ったバンドマンに夢中でした。

 

 あ、こりゃあやばいなと思ったのです。入口を間違えてしまったと。手の届く距離のバンドマンの最近の営業方法は、TwitterのDMです。そこでやりとりをしながら、ライブへ誘うのです。なんだったら、そこでいい感じになった子とお付き合いをしたり、セフレになったり……。

 

 案の定、バンドマンの繋がりになっていました。そこでできた繋がりとセフレしつつ、メンヘラの彼氏を持つ、もう、絵に描いたようなマイナーバンドのバンギャル。そこまで約半年です。驚異的な早さです。竹取の翁の気持ちが分かるくらいに成長が早く、そして完璧。

 

 しかし、彼女とはしばらく連絡をとらなくなってしまいました。

 わたしの私生活が忙しすぎて、全く時間が合わなくなってしまったのです。そうすると自然に疎遠になっていってしまうので、連絡も遠のいてしまいます。

 

 そんなある日、LINEが来ました。

 

「最近ホストにハマりました!たんとっぴ(指名を入れている彼女の担当ホスト)見に来てください!」

 

 行くところまで行くなぁ~って感じです。いっそすがすがしい。

 

 ところでわたし、ホストへ行ったことがなかったので、興味本位でついていくことにしました。

 以前、キャバ嬢をしていたこともあり、お店に入った瞬間に「仕事せな」と思ったのは本当に悲しい出来事でした。

 

「ねえ!わたしのたんとっぴ!」

 

 彼女の隣についたのは、目力の強い、でも優しい喋り方の男性。20代半ばくらい。彼女への営業が非常にマメらしく、Aちゃんが実家に帰っている間はFacetimeをしているくらいだといいます。確かに喋りも誘導も上手いなぁ、と感心していたところ、どうやら彼は支配人のようでした。

 

 わたしはフリーなので、何人かイケメンや面白系のホストさんがついてくれます。Aちゃんのたんとっぴは人気があるので、全然帰ってきません。必然的に、ヘルプのホストさんとフリーのわたしについたホストさんだけになります。

 間を持たすために簡単なゲームなどをするのですが、たんとっぴがいないAちゃんは不機嫌。それをどうにかして盛り上げようとするホストたちとわたし。

 結果、負けたら一気のゲーム、彼女が負けてもわたしが一気をして、完全にお仕事モード。

 でもまあ、なんとなく大音量でBPM早いの流れてるし、お酒ガンガン煽ってるし、うすら楽しい。

 

「ねぇねぇ!シャンパン入れちゃった!」

 

 気付けば閉店間際。いろんな卓でシャンパンコールが始まっています。Aちゃんの普段の売り上げがいいのか、わたしにつくホストさんが幹部レベルと店長と厚い層になってきました。

 

 そして始まるシャンパンコール!聞いてなかったカロリ。のケース!シャンパン渡されても飲まないA!仕方ないから一気するおれ!そこから完全グロッキー。

 途中で場内指名を入れたホストがいるのですが、彼はわたしの飲み方と飲みっぷりを褒めてくれました。ありがとう。

 朝まで飲もうよと全く飲んでない彼女に縋られたものの、さすがにこのペースで飲み続けていたらタクシー乗っても帰れないと思い、終電に合わせて単身店を出ました。

 わたしの担当になってくれた方は、わたしより10も年下です。震えます。エレベーターチューされましたが、わたしは店から走って終電に乗ることだけを考えており、むしろこの状態で走るのかということに絶望していたのであまり記憶がありません。

 

 帰宅してシャワーを浴びた頃に、わたしの担当さんとAちゃんからLINEが来ていたのですが、結局彼女は1時頃まで店に居座り、アフターと称してたんとっぴをお持ち帰りしたそうです。彼女曰く、

 

「たんとっぴはね、いつもベロベロによってるからね、枕がなくてすき」

 

 とのことで。

 

 さて、気になったので会計について聞いてみました。

 わたしは初回三千円、指名なし飲み直しでプラス二千円。あとは指名と聞いていたので、最低限のお金しか持っていきませんでした。

 ところが、会計の際にわたしの初回分がAちゃんの会計につけられていることが発覚(小粋なサプライズ)、結局二千円だけ払ってお終いでした。

 でも彼女は違う。ねだられるままにお酒をどんどん追加していく。そしてカロリ。をケースで入れて、シャンパンもねだられるままに入れる。ラストソングはいつも彼女。

 

「いつも、予算は3とか5なんだけど、気付いたらもっと使ってるんだよね」

 

 恐怖でしかない。彼女、脳内お花畑が強すぎるのです。

 

「でもたんとっぴと一緒にいられるからいいかなって!」

 

 全く良くないと思う。あと、彼女、女子大生なのです。このホストでの飲食代は仕送りから出ているのです。顔も知らないご両親を思うと、胸が苦しくなります。

 

 散々飲んで遊んで、そこそこ楽しいけれど殆ど仕事のような感じであまり楽しめなかったホスト。営業LINEは来ますが、果たして次、また飲みに行くかは分かりません……。

 

「ホス狂もしてるんですけど、最近地方の麺に蜜(貢ぎ)も始めたんですよ!月5で!匂わせ有害ギャ(この麺と繋がってますよというほんのりとしたアピール)やってみたいなと思って!」

 

 彼女の闇の階段はどこまで続くのか。そして、仕送り額は幾らなのか。アルバイトしてないし……。わたしは彼女の背中を見送るしかできないのでした。